安部 司著「食品の裏側」からの抜粋

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「調味料(アミノ酸等)」の「裏側」に化学調味料あり
 「調味料(アミノ酸等)」も「等」を隠れ蓑として、実際にはどれだけの種類が入っているかわかりません。
 「グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)」「DL-アラニン」「グリシン」などのアミノ酸系はもちろん、アミノ酸系以外の「核酸」なども「等」に入るのでOK。何種類入れてもいいので、加工する側としては非常に便利です。
 そもそも「グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)」と書いてしまうと、「なんだ、化学調味入りか」と嫌がられる。メーカーとしては、それはなんとか避けたいのです。
 しかし、「調味料(アミノ酸等)」とすれば、その表示から「グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)」を連想する人は少ない。それどころか、最近は「アミノ酸ブーム」でアミノ酸は健康によいという「アミノ酸信仰」さえあるようです。
 たしかに「グルタミン酸」は天然に存在するアミノ酸です。添加物リストにもありますが、味はほのかなうまみと酸味です。しかし、アルカリで中和して「グルタミン酸ナトリウム」にすると、あの独特の強いうまみが出ます。だから、表示も厳密にいえば、「調味料(アミノ酸化合物等)」とすべきです。
 「アミノ酸信仰」についても一言だけ。
 ふりかけに「「アミノ酸等」の表示を見つけ、「ラッキー、アミノ酸が入っているわ」と喜ぶ若い女性を見かけたことがありますが、めまいがする思いでした。
 通常の食事をすれば、アミノ酸飲料程度のアミノ酸は十分とれます。アミノ酸飲料など飲まなくても、おにぎり1ヶ、味噌汁1杯で、よほどの良質アミノ酸がとれるのです。

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化学調味料――使用量はうなぎのぼり!?
 何度が触れてきましたが、「化学調味料」によいイメージを持っている人は少ないでしょう。
 30年ほど前は、「料理に使うとおいしくなる」として一大ブームとなり、どの家庭でも、味噌汁に、煮物に、おひたしに、となんでもかんでもパッパツとしきりに振りかけて使ったものです。
 しかし後に、「化学調味料を食べると、頭が悪くなる」「ナトリウムの過剰摂取になって、体に悪い」そんな評判が立ちはじめ、家庭での消費量は減少。さらに、大量に摂取すると舌がしびれるなどといった「中華料理症候群」の報道も出て、「化学調味料」のイメージはますます悪化。
 そして食卓から、あのビンは消えていきました。
 ところが、いまも日本における「化学調味料」の使用量は減っていません。
 その理由は加工食品です。
 家庭での使用量はたしかに減ったかもしれませんが、加工食品には今でも大量に使われつづけており、その結果、消費量が伸びているのです。
 それも「化学調味料」「グルタミン酸ナトリウム」という物質名ではなく、「調味料(アミノ酸等)」と表示されているので、気がつかない人が多い(普通の人はまずわからないでしょう)。しかもこう書けば、前にも述べてように「アミノ酸が入っている。なんだか体によさそうだ」と勘違いしてくれる人だっています。
 いまや「化学調味料」を使わない加工食品のほうが珍しい。
 日本人の舌は完全に「化学調味料」に侵されている。
 そう言ってしまっていいくらいです。