レントゲン検査は、危険だ

 9月4日、日立市多賀図書館で何か読みたい本はなかと探していたら、「長寿のための医療非常識」(岡田正彦著、光文社)という本が目に留まった。めくって見るとレントゲン検査について興味ある記述があったので借用した。下に「レントゲン検査」のところの後半部を抜書きする。

(以下抜書き)
衝撃的な調査結果
 では、病院で受けるレントゲン検査はどうなのか。
 最近、その危険性がわかった。きっかけは、肺がん検診を評価したある調査であった。行ったのはフランスとチェコスロパキアの合同チームで、6000人ほどを対象にしたものだった。
 まずグループを二つに分け、一方には年2回のレントゲン撮影検査を3年連続で受けてもらい、他方には検診を受けないという約束で、調査が始められた。その期間が終わってさらに3年をおいて、死亡者数が集計された。調査対象が中年以降の男性ばかりで、しかも全員が愛煙家であったことから、6年も経てば、肺がん以外にもさまざまな原因で死亡する人がかなり出ることが事前に予測されていた。
 実際に集計を行ったところ、検診を受けたグループで341名が、受けなかったグループで291名の死亡が確認された。
 この結果はきわめて衝撃的である。なぜなら予想に反して、がん検診を受けたグループの方で圧倒的に死亡数か多かったからである。

 神話が崩れた
 なぜなのか。
 肺がんは、見つかれぽ全員が必ず手術を受ける。しかし中には、放置して構わないようながんもあつたかもしれない。そうであれば、無理に手術をしたことが体の免疫力を弱め、寿命を縮めた可能性が大いにある。
 もう一つ考えられるのが3年間にわたって胸部に受け続けたレントゲンの影響だ。幸い、この調査では、検診と無関係に自覚症状があって病院に駆け込み、肺がんと診断された人の数も記録されていた。この数値を使えば、二つのグルーグを比べても不公平はない。特に、後半3年間は、どちらのグループも検診を受けていないので、この数値が唯一の頼りでもある。

 図1がそのグラフである。前半3年間は、検診を受けなかった方のグループで肺がんが多い。検診を受けなければ、自覚症状が出てから病院へ行くしかないため、当然の結果である。ところが4年目を境に結果は大逆転し、今度は検診を受け続けたグループの方で、明らかに多くなっている。
 この結果については、年2回の胸部レントゲン検査が、新たに肺かんを誘発したとしか考えられない。しかもその被ばく量は、年間わずか約0.2ミリシーベルトにすぎない。従来、まったく安全とされてきた被ばく量なのである。
 もちろん、たった一つの調査結果だけで決めつけてしまうわけにはいかない。しかし同時期に、3つの研究グループがほぽ同じ調査を行っていて、結果がまったく同じだったのである。レントゲンの安全神話は崩れ去った。

 胃の検査か危ない
 バリウムを飲んで行う胃のレントゲン検査は透視と呼ばれる。検査の間、レントゲンが照射され続けるため被ばく量が多く、胸部レントゲン撮影の150倍にもなる。日本では、胃がん検診が普及しているが、すべてこの透視による方法で行われている。
 レントゲン検査にまつわる問題は、ほかにもいろいろあって、『日本人のがんの3.2パーセントはCT検査が原因』というニュースもあった。
(抜書きはここまで)

 これには、驚いた。年間わずか約0.2ミリシーベルトの被曝でがんが増えるとは!
 「医療法施行規則第30条の27」によると、年間(全身)の最大許容被曝線量は、50ミリシーベルトである。また、日本における自然放射線被曝線量は、年間1.42ミリシーベルトであるという。
 上の調査の0.2ミリシーベルトは、許容値のわずか0.4%であり、自然放射線被曝線量よりも小さい。これに対して、胃部]線(バリウム)検査の被曝線量は、約15ミリシーベルトで胸部]線検査(以降、胸部レントゲン検査と言わないで胸部]線検査という。)に比べて桁違いに大きい。
 わずか0.2ミリシーベルトで異常が発生するならば、15ミリシーベルトも浴びるとがん発生の確率は、非常に高くなるではないかと危惧される。
 私は、人間ドッグ健診の当初から胃部]線(バリウム)検査を受けていた。バリウムを飲むこと自体にはあまり抵抗は感じなかったが、排泄に苦労するのでできれば止めたいと思いながら続けていた。
 2000年(61歳)、バリウム飲用・排泄の問題よりも長時間]線に晒されることが気になりだした。胸部]線は、瞬時で終わるが、腹部はおよそ10分間も]線に晒される。許容値より少ないので問題ないといわれるが、がん検診でがんになるのではないかと心配するようになった。そこで、2000年は、胃部]線(バリウム)検査をスキップした。その後、いろいろと迷い2002年と2003年は実施したが、2004年以降は実施していない。人間ドッグは、12000円もするが、胃部]線(バリウム)検査を実施しなくても安くはしてくれないし、水素水の飲用、新潟大学の安保徹教授の本の知見から人間ドッグの有効性に疑問をもつようになったので、2006年は、人間ドッグをスキップした。2007年は、胃部]線(バリウム)検査のない市の健康診断(1000円)を受診した。2008年は、4月から始まった特定健診を理解していなかったため、特定健診も市の健診も受診しなかったが、今年(2009年)は、特定健診(無料)を受診した。
 動物的感覚と言ってもいいかもしれなが感覚的に胃部]線(バリウム)検査を嫌い、2004年以降は受診していなかったが、上記の記事に接しこの選択は、正しかったと安堵している。今後は、胸部]線検査もない特定健診しか受けないので、健診で被曝することはなくなった。
2009.09.05 

【追記1】
 日本における自然放射線被曝量は、年間1.42ミリシーベルトであるのに対して、胸部]線検査の被曝線量が0.2ミリシーベルトでがんが発生するというのはなかなか理解できない。これは、時間軸を考えないで被曝線量のみを比較しているからだと思われる。そこで、単位時間当たりの被曝線量を考えてみることにする。
 胸部]線撮影は、1回当たり20ミリ秒、胃部]線検査は、10分間、自然放射能は、365×24×60 秒として、単位時間当たりの被曝線量を計算すると、
 ・胸部]線検査2回 :0.2/0.04 = 5 ミリシーベルト/秒
 ・胃部]線     :15/(10×60) = 0.025 ミリシーベルト/秒
 ・自然放射線    :1.42/(365×24×60) = 0.0000027 ミリシーベルト/秒
となり、胸部]線検査が桁違いに数値が大きい。心配した胃部]線検査は、胸部レントゲンに比して2桁も小さく、自然放射線は、6桁も小さい。これは、胸部]線検査が、がん発生が大きく、胃部]線検査は、それほど大きくないと言える。
 これに対して、がん死亡率を見てみよう。


 この図によると、肺がん死亡率は、1950年から急激に上昇している。一方、胃がんは、男性の場合、ほとんど横ばいであるが、減少しつつあったものが最近は少し増加傾向にある。女性の場合は、減少傾向にあるが、減少トレンドは緩やかになっている。これらの結果には驚かざるを得なかった。以下強引な解釈であり正しいとは思わないが、照射放射線量に対応させて解釈すると次のようになる。
 戦後、学校で胸部]線が行なわれるようになったため、これが原因で肺がんが急激に増加したのではないだろうか。特に集団検診では、間接法なので、被曝線量が多い。胃がんは、横ばいであるから、胃部]線健診は、あまり影響していないように思えるが、男性の場合は、近年増加傾向が見られるので、胃部]線健診の影響が出てきているのではないだろうか。女性は、男性ほどには、胃部]線健診を受けていないので、増加傾向は、現れていないと思える。しかし、減少トレンドは緩やかになっているので、胃部]線健診の影響かもしれない。これらのことから、がん死亡率推移は、強引ではあるが、胸部]線検査と胃部]線検査の単位時間当たりの被曝線量によく対応していると言える。
 以上、がん発生のリスクは、総被曝線量ではなく、単位時間当たりの被曝線量ではないかと考える。要するに、総被曝線量は少なくても、短時間で強い放射線を浴びるとがんが発生しやすくなると言えそうだ。この考えが正しければ、法律の「年間(全身)の最大許容被曝線量50ミリシーベルト」は、変更しなければならなくなる。また、胸部]線検査は、映像解像度の問題があると思うが、単位時間当たりの放射線量をできるだけ減らす必要がある。照射時間を100ミリ秒とし照射強度を1/5にできないだろうか。しかし、医療機関は、法律の数値を楯に改良に取り組むことはしないと憶測する。
2010.02.15 

(注)
 当初、題名は、「胃部]線(バリウム)検査は、やはり危ない検査だった」としていたが、「追記」を記した時点で、この題名は、適切ではないと判断したので、「レントゲン検査は危険だ」に変更した。

【追記2】(新聞情報)
 新聞の切り抜きを整理していたところ、「放射線ひばく 線量限度内でも発ガン」という記事(産経新聞)が見つかったので紹介する。新聞の発行日を記載していなかったので、時期はよくわからないが、2005年前後の記事と推定する。
2011.01.30