著書「医学常識はウソだらけ」を読む

 2009年12月7日、松江からの帰りに広島県大竹市にある亀居城を見た後、広島駅の本屋で「医学常識はウソだらけ」(著者:三石 巌)という文庫本が目にとまった。
 母の介護を始めてから必要に応じていろいろな医学知識を習得してきたが、現在流布している医学常識はおかしいものが多いと思っていたので、すぐに購入した。
 まず、目次を見るといろいろと興味ある項目が並んでいる。参考までに目次を掲載したので見ていただきたい。
目次(pdf)

 著者は、医学について、『そもそも医学という学問は科学ではない。科学であるためには、「検証の精神」が不可欠であり、「検証」とは仮説を実証する科学的手続きのことである。だが、人間の生命に関わる分野であるだけに、昔からこの「検証」という手続きが曖昧のままに放置されてきたのだ。』と言っている。
 取り上げて、論じたいものは、沢山あるが、特に感服したものを3件以下に取り上げる。

1.白内障治療にビタミンCの大量投与 (P22)
 著者が還暦のときに、ひどく目がかすむので大学病院の眼科へ行ったところ、そこの主任教授に「白内障で、2〜3年もすれば見えなくなるでしょう。見えなくなったら、また来てください。」と気の毒そうに言うだけで、治療をしようとしなかったと。
 そこで彼は、自分で治してやろうと決意した。文献によれば、白内障はビタミンCの不足だとあったので、浴びるほどビタミンCを摂取していけば、完璧には治癒しなくても、白内障の進行を食いとめられる可能性が高いと考え、自らの手でビタミンCを注射しはじめたそうだ。結果は、言うまでもないと。「2〜3年で見えなくなる」はずだった彼の目は、それから35年たっても本来の役目を立派に果たしているという。
 ビタミンCは、典型的な抗酸化剤である。白内障は、活性酸素による酸化であるから、ビタミンCの大量投与よる治療は、納得できる方法である。

2.糖尿病の合併症退治こそ真の治療 (P63)
 たいがいの医者は、血糖値を下げることが糖尿病治療の目的だと思っている。だから、ひたすら患者に減量を要求する。しかし、彼に言わせれば、血糖値のコントロールは糖尿病の一つの手段でしかない。それ以外にも、糖尿病への対抗手段はあるという。
 『ブドウ糖は、亀の甲のような六角形をしている。ふつうはそれが閉じているのだが、ときどき少し口の開いた形のものか混じってしまう。悪さをするのは、この変形したブドウ糖である。血糖値が高くなってブドウ糖の全体量が増えれば、それだけ悪いブドウ糖も増えてしまう。この変形したブドウ糖が困るのは、タンパク質にくっつこうとする性質を持っている点である。プドウ糖にくっつかれると、タンパク質は本来の働きができない。
 タンパク質の中でも、とくにブドウ糖のターゲットになりやすいのが、SODと呼ばれる活性酸素除去酵素である。いろいろな病気の原因になる活性酸素という「悪党」を除去するのがSODの仕事だから、その働きが封じ込めれれると大変なことになる。ブドウ糖にくっつかれたSODは、壊れるときに自身で強い活性酸素を発生させてしまう。そのため、糖尿病になると体内で活性酸素か大暴れするようになり、網膜症、腎症、神経障害といった合併症を惹き起こすことになる。
 これらの合併症こそ、糖尿病が持つ怖さの本質である。したがって逆に言えば、合併症さえ起こさなければ糖尿病は少しも怖くないことになる。血糖値を下げることが治療の最終目的ではないと言ったのは、そのためである。血糖値が下がらなくても、活性酸素が悪さをしないような対策を講じれば、糖尿病を克服したのと同じことになるわけである。』と。
 活性酸素が悪さをしないようにするには、抗活性酸素剤を摂取すればよいという。彼は、これを「スカベンジャー」と称している。「スカベンジャー」を含有する食品表を提示している。

 この説明を読んで目から鱗が落ちたようだった。糖尿病になると、おいしいものも食べられなくなると思うと陰鬱であった。私の血糖値は、ここ数年間は、100〜110の間に分布し最近の基準では、×がつくが、この程度なら心配することはないと考えていた。 血糖値が高くても「スカベンジャー」を摂取していれば、問題ないようなので安心した。水素水は、典型的な「スカベンジャー」であるから、これを飲んでいる限り合併症が引き起こされることはない考える。

3.「卵はコレステロールの元」のウソ (P216)
 母や妹たちがよく「卵を食べるとコレステロールが上がる」と言っていたので、本当だろうと思っていた。ところが、この書によるとウソだという。
 このようなウソが流布したのは、ある実験が発端だという。『その実験を行なったのは、ロシアのアニチコフという医学者である。彼は実験台としてウサギを選び、卵などの動物性の餌を大量に与えた。そのあとでウサギの血液を採取して検査してみると、コレステロール値が異常に高くなっていた。そこで「卵は危険だ」という話になったわけだが、ちょっと待ってもらいたい。こんなことは誰でも知っていると思うが、ウサギは草食動物である。つまり、ふだん食べているものにはコレステロールなど含まれていないのである。そのウサギに大量の卵を無理やり食べさせるのだから、血中コレステロール値が増えるのは当たり前である。だからといって、人間にとっても卵が危険だなどといえるわけがない。
 彼が、もう少し本質を考える科学者精神の持ち主なら、ウサギなんかを実験動物に使わず、人間と同じ雑食動物であるイヌなどを使ったに違いない。実は、私のこの話を知った国立栄養研究所の研究員たちが自ら人体実験を行なったことがある。彼らにしてみれば「卵はコレステロールの大敵」という常識を証明したかったのかもしれない。何人かの研究員が1日に10個の卵を摂り、1ヵ月後、2ヵ月後に血液検査をしてみたのだが、コレステロールの値はまるで上がっていなかったのである。』
 これを読んで全く呆れてしまった。インターネットで「卵」と「コレステロール」で検索すると、「卵を食べるとコレステロールが上がるので、1日に1ヶ以下にしたがよい。」などとの記述があちこちに出てくる。
 それにしても、いい加減な実験結果が大々的に流布するのはなぜだろうか。医学的なものに対しては、権威に弱いからだろうか。
 考えてみると、日本動脈硬化学会の「脂質異常症の診断基準」自体もおかしい。ホームページでは、LDLコレステロール ≧140mg/dL、HDLコレステロール<40mg/dL、トリグリセライド ≧150mg/dLと数値を提示しているが、ホームページにはその根拠を全く示していない。浜六郎氏の著書「コレステロールに薬はいらない!」によると日本動脈硬化学会は、根拠をどこにも示していないという。
 全国の病院や医師は、この根拠を確認してるだろうか。根拠不明の数値を検証することもなく、そのまま受け入れ、高いだの低いだのと患者に説明し、基準値を外れていると薬を使って基準値内に入るようにしている。コレステロール低下剤スタチンの使用量は膨大で健康保険の医療費を押し上げているという。根拠不明の数値が堂々とまかり通ることは、卵のコレステロール説がまかり通ることと同じである。
 2報前の「動脈硬化の原因」で、動脈硬化の真犯人は、悪玉コレステロールが活性酸素によって酸化されることでできる酸化変性 LDLであるということであった。ならば、動脈硬化は、LDLコレステロールが多くても酸化されなければ、動脈硬化にはならない。よって、コレステロールに診断基準を設ける必要はない。
 だから、私は、コレステロールの基準値は、まったく無視している。
 動脈硬化の診断には、頚動脈エコー検査、CAVI(キャビィ)検査、眼底検査などがあるようだ。動脈硬化に対しては、根拠不明なコレステロールを問題にするのではなく、動脈硬化を直接計測する方向に進むべきである。