「通貨発行権のある政府」は借金する必要はない

国債の市中消化は、金本位制の残骸で間違っている

 筆者は、若いときは、会社の仕事が多忙で国の借金のことなど考える余裕はなかったが、60歳を過ぎて(約20年前)からは、多忙から開放されたので国の借金について考えるようになった。
 当時も大きな国債残高に対して、財政破綻するとか、後代にツケを残すなといって騒がれていた。そして、国の借金を家庭の借金に例えて説明する人が多かったが、今の財務省もそうだが、これは、間違っており、議論になると、わかりやすいように、いつも次のように説明してきた。
 「家庭は、借金が増え返済不能になると破綻するが、国は、輪転機をもっているので、不足すれば、輪転機を回して金を刷れば、いくらでも返済できる。よって破綻することはない。家庭も輪転機を持てば、破産することはないが、残念ながら持てない。」と。
 政府は、税収で賄えないときは、国債を発行するが、国債は、「債」の字があることからも借金である。政府は、国債を発行し市中銀行に日銀当座預金を使って購入してもらう。政府に日銀当座預金が入るので、これを使っていろいろと行政を行う。これは、国債の市中消化と言われ通常行われている。
 しかし、筆者は、「政府には、通貨発行権がある」のになぜ国債を発行するのか、いつも疑問に思っていた。

1.国債の市中消化は、金本位制の残骸で間違っている

 金本位制のときは、政府は、金(gold)の所有量内で通貨を発行できる。金(gold)が不足し必要通貨を発行できなくなると、国債を発行して市場から借金することになる。これは、誰でも理解できることである。
 ところが、現在は、金本位制ではない。政府に金(gold)がなくても、「政府には通貨発行権がある」ので、通貨は、いくらでも発行できる。ところが、政府は、依然として国債を発行して市場から借金しているのだ。これは、大きな間違いだ。

 政府のみならず、経済学者、財務省、各政党、マスコミ、経済評論家などは、政府の国債発行は、当然のことと考えている。金本位制思考のままである。
 このように多くの人が、金本位制の思考から抜け出ていないのだ。これを改めないと日本はよくならない。
 国債は、借金であるから、増大すると財政破綻するという誤った破綻論が横行し、20年以上も緊縮財政が続き、日本は、劣化して行き後進国化している。

2.政府は、通貨はいくらでも発行できる

 通貨を考える場合、下記は、アプリオリな前提である。公理といってよいだろう。
  政府には、「通貨発行権」がある。
 この文言は、MMTに言われなくても、政府は、いくらでも通貨を発行することができることを表している。小学生高学年以上なら誰でもこの文言を理解できるだろう。これは、非常に重要なことである。これを理解できれば、「通貨発行権のある政府がなぜ借金するのか?」と疑問を持つだろう。
 MMTは、「政府は、いくらでも、好きなだけ支出できる。自国通貨を発行できる政府(政府+中央銀行)は、デフォルトしない。」と主張しているが、上記公理からの当然の帰結であり、正しい。

 次は、通貨の信認である。
 通貨に信認がなければ、正常に流通しない。通貨の信認を得るための手段が、徴税である。徴税により通貨の信認が生まれる。徴税は、財源確保の手段ではない。これは、MMTから学んだ。

 次は、政府の財源である。
 政府は、通貨を発行できるので、政府の財源は、新規発行通貨税収で賄えばよい。

 政府の財源は、税収で賄わなければならないというのは、単なる間違った思い込みである。

 次は、通貨発行限度である。
 通貨はいくらでも発行できるが、供給能力を超える発行は、インフレになるので、インフレ目標を超えないよう管理しながら通貨発行する必要がある。これも、MMTから学んだ。

 政府は、「プライマリーバランスの黒字化」を挙げているが、これは、政府の通常経費は、税収だけで賄えというものであり、政府の借金が大きくなると財政破綻するという誤った考えから来ている。
 プライマリバランスの黒字化だと言って緊縮財政を行い更に消費税を増税するのは、国民を不幸にする大愚策である。

3.現システムにおける新規通貨発行

 新規通貨発行は、現在のシステムなら「財政ファイナンス」と言われる国債の日銀消化である。これは、政府が、日銀に借金することである。「信用創造」から考えれば、当然である。
 日銀は、民間会社であるが、政府が55%の株式を持っているので、政府の子会社である。よって、日銀に国債を発行しても返済の必要はない。
 新規通貨発行は、日銀への国債発行であるが、返済する必要のない借金なので、「国債」とは言わないで、「新規通貨発行依頼票」とでも言えばよい。「債」という字が無くなれば、国民は安心するだろうし、借金で財政破綻するという間違ったプロパガンダは、なくなるだろう。
 アメリカの中央銀行(FRB)は、完全な民間銀行である。なので、アメリカ政府は、財政拡大には「国債」の発行が必要である。そもそも中央銀行が民間というのは、間違っている。ウイルソン大統領が、ロスチャイルドなどの国際銀行家の軍門にくだったためといわれる。
 ヨーロッパ諸国は、共通通貨ユーロであるから、各国は新規通貨発行はできない。国債を発行して借金するしかない。
 国債の日銀消化は、財政法5条で禁止されている。その理由は、[教えて日銀]によれば「政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからです。」である。目標インフレを超えないように管理して発行すれば、何ら問題ないので、廃止すべきである。ただし、今の条文では、国会の承認があれば、OKなので、大いに活用すればよい。

4.「国債発行」が「新規通貨発行」に変わるとどうなるか

 「政府の財源は、新規発行通貨と税収で賄えばよい。」となるといろいろなところが変わってくる。筆者は、素人なのでよくわからないことが多いが、思いつくままに以下に記す。

  1. 日銀への国債発行を「新規通貨発行依頼票」に変更すれば、「国の借金で破綻する!」などと言えなくなる。
  2. 緊縮財政をやめ、新規通貨を増発し、経済成長とGDPの増加を図ることができる。
  3. 新規通貨発行は、同額の金融緩和となり、市中銀行の日銀当座預金が増えていくが、実体経済には、何も影響しないので問題なかろう。異次元緩和と称して市場から大量の国債を買ってマネタリーベースを増大させたが、実体経済には、何の役にも立っていない。
  4. 「プライマリーバランスの黒字化」は、全く無用な言葉になる。
  5. 「新規通貨発行」になると、市場の国債は増えない。既発国債は、どのように管理するか検討する必要がる。国債の金利は固定し、国債保持は、年金・年金基金など非営利団体のみとし、それ以外は、日銀が徐々に買い戻せばよいのではなかろうか。
  6. 新規通貨発行になると、発行残高は、債務残高ではなく、新規通貨発行残高になる。
    ところで、財務省は、「国の借金は、1100兆円」と言っているが、日銀が、約500兆円の国債を保持している。この500兆円は、「新規通貨発行残高」と言えるから、「国の借金は、600兆円」が正しい。
  7. 新たな財政学の確立が必要である。新規学者の活躍を期待する。そして、従来の間違った経済学者は、引退へ。20年間GDPを増やさないで日本を劣化させたが、これは犯罪に相当する。責任は重い。

5.国民へのアピール

 借金は、返済すべきものであるというのは、一般国民の常識である。国債は、借金である。国の借金は、大きくても問題ないとか、国の借金は、返済しなくてもよいなどと言っても、その考え方を理解している人ならわかるが、一般の国民には、理解できない。
 京都大学の藤井聡教授は、2017年5月に「プライマリーバランス亡国論」という本を出している。内容は、わかり易く、全くの正論であるが、「財政赤字なくして財政健全化なし」とか「負債こそ成長の源泉である」などは、国民には、簡単には理解されない。
 国民に簡単に理解されるのは、「政府には通貨発行権があるので、借金などしないで、新規通貨を発行すればよい」である。これを国民に大いにアピールし、そして国民が政治家を動かし積極財政出動を行い景気の回復、GDPの増大を実現し国民を豊かにしなければならない。

 このブログは、4月3日にアップロードしましたが、その後、変更・追加・削除を繰り返し、4月29日に最終版としました。
 その後、文章が長すぎるので、短くした(5月4日)。

追記

 上では、書かなかったが、新規通貨発行を明確にするためには、日銀を国有化することである。信用創造など考える必要はない。政府には、通貨発行権があるので、必要に応じて通貨を発行できる。
 日銀の国有化は、米国の反対を受けるだろう。
 MMTは、本来、FRBは、国有化すべきと言いたいところであるが、命の危険に晒されるので、適当に妥協しているだけだと思う。(2020/06/06)

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