母のコレステロール低下剤の服用中止を思い立ったのは、94歳にもなって今更コレステロールを気にすることもないだろうという単純な考えからだった。だ
が、単純な考えだったため、かえって、本当に大丈夫かと少々心配になったので、インターネットで調べてみたところ、浜六郎著「コレステロールに薬はいらない!」という本があることを知った。そこで本屋へ行ってみたところ、この本の著者と同じ人が著わした「高血圧は薬で下げるな!」という本と一緒に並んでいたので、両方とも購入した。
読み始めてすぐに、愕然とし怒りが込み上がってきた。最初の2ページを読んだだけで、コレステロール値の基準はとんでもないものであることが明確だったからだ。少々長いがその2ページ弱を以下に示す。
これを読むと、母は、よくもまあ、間違ったことを長年延々とやってきたことかと嘆息してしまう。母は、「卵は大好きだけども、コレステロールが上がるのであまり食べられない。」とよく嘆いていた。
日本動脈硬化学会は、「220以下」という基準値は決めるも、その根拠を示していない。著者によると、日本人を対象とした適切な臨床試験データ、つまり科学的根拠は一切ないという。コレステロールが高いと動脈硬化になりやすいというならば、コレステロール値と動脈硬化に関する何らかのデータとの相関図ぐらいは示すべきであるが、そのようなものは一切示されていないようだ。根拠が示されていなければ、基準値の良否の判断はできない。そこで、著者は、あちこちの市や団体の検診などの追跡調査結果を分析して、コレステロール値が、どういう値が一番死亡危険度が低いかを検討し、そこから、理想のコレステロール値を求めている。本の中には、16件が記載されているが、その中の日本のもの7件を下に示す。
コレステロールは、生命維持に不可欠の物質であり、免疫細胞の膜にも必須で、コレステロールを下げると免疫活性が低下し、感染症に弱くなり、ガンにかかり易くなるという。心筋梗塞を心配して、ガンになって死んでしまうとは何ともいただけない話である。
母は、風邪に強く、せいぜい7〜8年に1回ひく程度であった。80歳台の半ば頃、風邪をひき肺炎になり入院したことがある。その頃、母はコレステロール低下剤を服用していたので、220〜230程度だったと推定される。医者は、老人は風邪をひくと肺炎になる可能性が高いので注意するよう言っていた。母の面倒を見出してからは、風邪をうつさないよう注意していたが、2007年秋、妹が大阪から強烈な風邪を持ち込み母にうつしてしまった。しかし、肺炎にはならなかった。このときは、コレステロール低下剤は中止しており、この頃の健診データをみるとコレステロール値は277であった。
要するに、コレステロール値が低いとき、風邪をひいたときは肺炎になったが、コレステロール値が高いときは、風邪をひても肺炎にはならなかったのである。この事実は、時間の隔たりがあり少々強引ではあるが、著者の見解を裏付けているとも言える。
以下は、私の見解である。動脈硬化や心筋梗塞などについてデータを持っていないので、一般論である。
上記の本に日本人のコレステロール分布が載っていたので、図2に示す。
これを見るとほゞ正規分布していことがわかる。これは、何ら異常を示すものではなく、自然の摂理を表しているといえる。この分布の中心より少し上の220のところに線を引き、これ以上は「高コレステロール血症」と病人扱いするのは、間違った設定であり、自然への冒涜、神への冒涜ともいえる。
図3 二山のコレステロール分布 |
もし、コレステロール分布が、図3のように二山になっていて、山の間に線を引くなら納得できる。コレステロールが二山ではなくほゞ正規分布しているということは、逆にコレステロールは動脈硬化などの原因ではないことを物語っている。原因は、別にある。
それでは、何故コレステロールが動脈硬化の犯人にされているのだろか。インターネットを調べてもよくわからい。動脈硬化のある人の動脈にコレステロールが沈着しているので、コレステロール値が高いほど沈着すると単純に考えているからだろう。コレステロールが沈着するのは、沈着する原因があるからであって、コレステロール値が高いことを原因とするのは間違っている。コレステロール低下剤を服用する必要は更々ない。
コレステロール低下剤の服用は、身体が要求する量のコレステロールを肝臓で作ろうとしているのを無理矢理抑制するので、これは身体にとって大きなストレスである。このストレスが新たな病気を引き起こすことになる。安保徹教授の「病気の原因はストレスである」という言葉を思い出すと共に「医療が病いをつくる」という著書を思い出した。
冒頭の本の中でコレステロールの主な働きは、@全身の細胞の細胞膜や細胞内の膜構造物の材料となること(特に脳や神経細胞にはコレステロールが多い)、A男性ホルモンや女性ホルモン、抗ストレスホルモンなどの材料となること、B胆汁酸の材料となること、の3つだと記してあったが、@が特に気になった。
母は、90歳頃、左目の視神経静脈破裂が発生し、数年後、右目の視神経静脈破裂が発生したが、この原因は、コレステロール低下剤でコレステロールを下げたためではないかと考えらなくもない。母は、コレステロール低下剤の犠牲者かもしれない。